負けを確信し、右腕を差し出した克巳・・・
ピクルは強敵(とも)との別れを惜しみ、克巳から奪った右腕を泣きながら銜えていた。

驚愕の表情を浮かべる末堂。
引きちぎられた克巳の右腕からは、「ピュ・・・」「ピュ・・・」 と音を立てて
大量の血液が噴き出している。
誇り高き神心会の白道着は、右脇から腰にかけて真っ赤に染まった。

そんな末堂の心配をよそに、克巳の表情は晴れやかだった。
克巳にはピクルと交わした約束を果たす覚悟がある。

大量の出血により意識が朦朧とし、ピクルの巨体が霞んで見え始めたとき、
克巳はその覚悟を心の中でそっとささやいた。

『 約束は守る・・・ 』

『 ここに来て、生き長らえようとは思っちゃいない・・・ 』

『 おまえの勝ちだ・・・ 』

『食ってくれ・・・』

そして・・・。
遂に克巳が倒れた。
倒れた姿そのものが、克巳の本気の覚悟を物語っていた。

『 食わせる気だッ 本気でッッ 』 と刃牙。

会場は水を打ったように静まりかえった。

目を薄く開いたまま横たわる克巳に 「ズシャリ・・」 と近づくピクル。
倒れる獲物の右腕を銜えながら、ゆっくりと歩み寄る様子は、自然界の弱肉強食の世界そのものに見えた。

その時、光成が左手を大きく上げる。
なにかの合図のようだ。

『 許せピクル・・・ 』

『 ここは恐竜時代ではない・・・ 』

『 約束は守れんッッ 』

会場で待機していた4名が立ち上がり、ピクルに銃口を向けた。
これは、光成が用意していた万が一の 『 備え 』 だった。

しかし、その 『 備え 』 に立ちはだかる一人の男が光成の前に現れる。

愚地独歩だ。

光成の目の前に立ち、正拳突きの構えを見せる独歩。

『 アンタまさか・・・倅に恥かかせる気じゃねェよなァ 』

独歩の鋭い眼光が光成を突き刺す。
独歩には、息子の覚悟を踏みにじるその行為が許せなかった。
男と男が交わした約束。
その約束を果たそうとする克巳に横槍は無用。
右の拳を握り締めながら、独歩もまた覚悟を決めていた。

その時、ピクルは大きな掌を合わせ、克巳の前に跪いた。
戦利品であった克巳の右腕を前に、人間として、親友としての合掌。

克巳への畏敬の念を抱くピクルが次にとる行動とは!?